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ハッピーエンドのロマンス小説新書判 ハーレクイン ゴージャスでドラマティック! ハーレクイン文庫 ロマンスからスリラーまで 最高の感動と興奮を北米からあなたへ MIRABOOKS コミックが奏でる魅惑のラブ・ロマンス



隠された素顔
著/アリー・ブレイク 翻訳/秋元美由起
発行/ハーレクイン
シリーズ/ハーレクイン・イマージュ
形 式 : 
価 格 : 681円(税込)
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著者プロフィール

 アリー・ブレイク(Ally Blake)
 大学を卒業後、ファッション関係の小売店に勤めたり、プロのチアリーダーとして活躍したり、友人の短編映画に出たりしていたが、やがて小説を書くことに取りつかれてしまった。母親がロマンス小説を愛読していた影響で、自然にロマンスを書きたいと思うようになったという。ゴージャスな夫マークとラスベガスで結婚後、オーストラリアの美しい町メルボルンに居を構えた。家庭では生涯の恋人である夫が炊事と掃除を受け持っているので、作品に彼のようなヒーローを登場させようかと思案中。
解説

 マギーは海辺の小さな町のはずれにある古びた屋敷に暮らしていた。一人暮らしに不満はないが、ある必要に迫られて、便利屋に仕事を依頼することにした。裏庭が荒れ放題で、ビーチに出たくても行けないのだ。マギーの家を訪れた便利屋のトムは、たちまち彼女に興味をそそられた。なかなかの美人だが、態度はとても冷ややかだ。その後インターネットを使って、マギーの素性を知り、トムは驚いた。彼女は有名な画家で、かつては都会で華やかな生活を送っていた――。なぜ、都会を捨てたのだろう? 似たような過去を持つトムは、マギーに近づかずにはいられなかった。
抄録

「もう暗い」トムが言った。「帰ったほうがいいな」
 彼の言うとおりだ。おしゃべりをしているうちに日が落ちて、月がかすかに海を照らしている。
 トムが振り返った。言葉では帰るつもりでいるようだが、彼の目、雰囲気、こわばった体がその反対のことを告げている。
「ビールをごちそうさま」
「いつでもどうぞ」マギーの声はかすれた。
 トムはマギーが別れを告げるのを待った。だが、彼女には言えなかった。足の感覚がなくて、彼から離れろと命じることもできない。胸の中で思いがけず感情が荒れ狂っている。トムがなにを求めているのか、自分がなにを求めているのか、わからない。
 最初に屈したのはトムだった。彼は大きく二歩進み出て、マギーの前に立った。そして彼女の目を見おろした。その目が驚きと欲望で見開いていると、マギーはわかっていた。トムはそっと手を上げ、こぶしの背で彼女の頬に触れた。ふいにマギーは呼吸ができなくなった。
 誘いをかけるというより、倒れないでいるために、マギーはトムの胸に手をあてた。彼のがっしりした体を走る震えが伝わり、そのときようやくマギーは、もう何日も前から二人が深く惹かれ合っていたことを認めた。
 その感情は忍び寄ってきて、彼女の心の奥底にこっそりからまり、固くもつれ合い、決してほぐすことができないのではないかとこわくなるほどだった。
「君みたいないいにおいの人のそばにいては、だれも正気ではいられないよ、マギー・ブライス」
 トムが顔を近づけると、マギーは彼がキスしようとしているのだと、なかばうろたえ、なかば期待した。だが、彼は最後の瞬間に気を変え、彼女の首に顔を寄せると、大きく息を吸った。マギーは彼がもっと近づけるように頭を傾けた。
「僕のメルロー趣味については、君の言うとおりだった」トムがささやく。「すばらしい香りがあると、どうしようもなくなってしまう」
「そうなの?」首に息を吹きかけながら、トムが話しつづけてくれるなら、マギーは彼がなにを言おうとどうでもよかった。
「ふうむ」トムは彼女の望みどおりにしていた。
「いつもつけているのよ」マギーはつぶやいた。「絵の具のにおいをごまかすため。いくらシャワーを浴びても、どうしても消えないみたいだから」
「あの青い絵が大好きな、もう一つの理由だ」
 マギーは自分がほほえんでいるのを感じた。口元や頬だけでなく、全身で。刻々と体が温かくなり、うずき、彼に対して無防備になっていくのを感じる。
 しかし、こんなことはするべきではない、感じるべきではないのだ。今はまだ。望んでいないし、できない。精神的に、感情的に、道徳的に……。
 首が冷たくなり、気がつくと、トムが離れていた。マギーが震えるようにまぶたを開けると、彼が見おろしている。その熱をおびたはしばみ色の瞳は薄闇の中で黒っぽく見えたが、なにが起ころうとしているかは、はっきりしていた。二人は口づけをし、それは骨もとろかすほど、地面をゆるがすほどのものになるだろう。マギーがこれまで一度も経験したことのないもののように。
 しかし、マギーはこれまで感じたことがないほど強く望んでいたのに、彼女の良心、記憶、理性が顔に平手打ちをくらわせた。その激しさに、実際にたじろぐほどに。
「トム」マギーがささやく。彼の名前が喉に引っかかった。
「ああ、マギー」トムの低い声が彼女の唇のすぐそばで響いた。「どうしたいか言ってくれ」
「待ってほしいの」
 トムの胸にあてた手が彼を押しのけた。かすかに。だが、彼の動きをとめるにはじゅうぶんだった。
「どうした?」トムはマギーの心の奥底をのぞきこみ、彼女は言おうとしていたことを忘れそうになるほどだった。
 だが、マギーが犯しうる最悪の過ちは、新しい習慣を作ることによって古い習慣を打ち壊すことだ。
「トム、できない。だめなの」
「どうして?」
「わ、私……結婚しているの」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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