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トップ>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説外国人>ブライトン・ロック!2
 
 ■ ブライトン・ロック!2
 


ブライトン・ロック!2
著/椹野道流
発行/二見書房
シリーズ/ブライトン・ロック! レーベル/シャレード文庫
形 式 : 
価 格 : 840円(税込)
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解説

 イギリスの港町、ブライトンで地元の大学生・ジェレミーと出会った留学生の航洋。心の傷を受け止め合い結ばれた二人は、航洋の住むフラットで「家族」として暮らし始める。ところがある日、航洋を手ひどくフッた元カノ・ナツメがロンドンにやってくる。強気なナツメは航洋を呼び出し、ヨリを戻したいと迫るのだが……。
目次

ブライトン・ロック! 2
A Happy Christmas to You!
抄録

 イギリス南東部の港町ブライトン。
 短い夏は瞬く間に過ぎ、秋は冬と腕を組んでやってきた。
 そんな十月半ば、ある土曜日の明け方。まだ空がオレンジ色に変わる気配を見せない時刻……。

 首筋と肩がひどく寒くて、津田(つだ)航洋(こうよう)はベッドの中でブルリと身を震わせた。その動きに応(こた)えるように、背後から抱きしめる腕に力がこもる。温かな吐息が首筋にかかった。
「……ん……くすぐったいよ」
 首を縮こめながら、航洋は小声で文句を言う。すると耳元で、くぐもった笑い声が聞こえた。寝起きの掠(かす)れた声が囁(ささや)く。
「寒そうだから、温めてやろうと思ったんだけどな」
 それは、航洋の同居人であり恋人であるジェレミー・ソーンの声だった。昨夜(ゆうべ)眠りについたときは、いなかったはずの。

 半年前、航洋は五年間通った医科大学に退学届けを提出し、一年の予定で渡英した。
 これまで周囲に流され、人の顔色ばかり窺(うかが)ってきた自分を変えるため、そして自分のこれからを考えるため、誰(だれ)も知人のいない場所で頑張って生きてみようと思ったのだ。
 そして、とりあえず落ち着いた海辺の町ブライトンで、航洋はジェレミーと出会った。ジェレミーは、近所のスーパーマーケット 「アズダ」で働くアルバイト店員だった。
 見知らぬ異国で初めて優しく接してくれたジェレミーを、航洋は次第に心のよりどころとして慕うようになっていた。
 航洋が薬物中毒者に襲われるという事件をきっかけに、二人は航洋のフラットで同居を始めた。だがジェレミーは、人と深い絆(きずな)を結ぶことを拒み、期間限定の同居人として航洋を扱った。戸惑(とまど)う航洋だったが、やがてそれは、ジェレミーが子供の頃に家族を事故で亡くしたことが原因であると知る。
 そして、旅先で遭遇した嵐(あらし)の夜、ジェレミーは初めて航洋の前で心の傷をさらけ出す。航洋はそれを受け止め、癒(いや)し、二人はようやく恋人となり、「家族」になったのだった……。

「おはよう……っていうか、お帰り」
 航洋は、ゴソゴソと腕の中で寝返りを打った。そこにいたのは、まさしくジェレミーその人だった。服を脱ぐのも億劫(おっくう)だったのか、彼は出かけるとき着ていた服のままベッドに潜り込んだらしい。チェックのワークシャツに、航洋は見覚えがあった。
 航洋は、そんなジェレミーの姿と乱れた布団(ふとん)を見遣(みや)って、唇を尖(とが)らせた。
「ああっ。ジェレミーが布団巻き込んじゃったから、僕が寒かったんじゃないか。ひどいや」
「ああ……ほんとだな。悪(わり)ぃ」
 寝起きのせいでいつもよりきついスコットランド訛(なまり)でそう言って、ジェレミーは航洋を抱いていた腕を解いた。クシャクシャになっていたブランケットと布団をきっちり重ね合わせ、あらためて航洋の身体(からだ)をふわりと包み込む。力強い腕と温かな布団にくるまれて、航洋はようやく心地(ここち)よさそうに、ジェレミーに寄り添った。布団の下で、ジェレミーの大きな手のひらが、冷たくなった航洋の肩を撫(な)でる。パジャマ越しの優しい温(ぬく)もりに、航洋は安堵(あんど)の溜息(ためいき)をついた。
「これで寒くないだろ?」
「うん。あったかい」
「じゃあ、もっぺん寝るか」
 ジェレミーは大きな欠伸(あくび)をする。航洋は視線を上げ、ジェレミーの面長の顔を見た。尖った顎(あご)の先に、うっすら金色の無精ひげが生えている。灰青色の瞳(ひとみ)は、眠そうに細められていた。
「ごめん、起こしちゃって。昨夜、いつ帰ってきた? 一時頃まで待ってたけど、眠くて仕方なくてさ」
 そう、昨夜、仕事から帰ってきたジェレミーは、夕飯も食べずに荷物だけ持ってふいと出かけてしまったのだ。お互いの行動にはあまり干渉しないことにしているとはいえ、彼がそんなふうに何も言わずに出かけることは珍しかった。
「三時過ぎ。思ったより遅くなった」
「大学へ行ってたんだよね?」
「ああ。なんでわかる?」
「……いつもの匂(にお)いがする」
 航洋は、ジェレミーの長い首筋に鼻先を押しつけ、クスリと笑った。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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