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進之介密命剣 忘れ草秘剣帖1
進之介密命剣 忘れ草秘剣帖1
著/
森詠
発行/
二見書房
レーベル/
二見時代小説文庫
シリーズ/
忘れ草秘剣帖
形 式 :
価 格 : 735円(税込)
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解説
安政二年(一八五五)五月、開港前夜の横浜村近くの浜に、瀕死の若侍を乗せた小舟が打ち上げられた。回船問屋宮田屋に運ばれたが、頭に銃創、袈裟懸けの一刀は肌着の上の鎖帷子まで切断していた。宮田屋の娘おさきらの懸命な介抱で傷は癒えたが、記憶が戻らない。そして、若侍の過去にからむ不穏な事件が始まった。
目次
第一話 忘却剣
第二話 花冷え
第三話 忘れ草をあなたに
抄録
神奈川宿は夜明け前のまだ暗いうちから、人々は起き出して動き出す。
早起きの人たちが台所や庭で朝餉の支度をするため、薪を燃やす煙が靄となって宿場の町並に漂った。
靄は薄い絹布のように棚引き、かすかに移動する空気に乗って町並を抜け、浜辺に下りて、海からの霧と交わった。
昨日の時化がまるで夢か幻だったかのように江戸湾の海は鎮まっていた。
朝靄に霞んだ砂浜には寄せては返す水の音がわずかに響いていた。
浜辺に人の騒ぎが起こった。
昨夜の風雨を避けて、陸地に引き揚げておいた舟を海に戻し、漁に出ようとした漁師たちが、浜辺に打ち上げている小舟を見つけたのだ。
漁師たちは小舟を取り囲み、恐る恐る小舟を覗き込んでいる。
小舟は砂浜に斜めに船体を傾けて鎮座していた。舟には片側の船縁まで水が溜まっていた。
その水溜りに一人の侍が、半身を浸けるようにして突っ伏していた。侍は死んでいるのか、漁師たちが騒いでも微動だにしなかった。
侍の左肩には大刀で斬られた刀痕があり、舟底に溜まった海水は血で染まっていた。
漁師の一人が勇気を奮い、侍の肩を揺すった。侍はかすかに呻き声を上げた。
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