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バースデイ・パニック!
バースデイ・パニック!
著/
藤原万璃子
画/
鳳麗華
発行/
二見書房
レーベル/
シャレード文庫
シリーズ/
シャルル&ハルキシリーズ
形 式 :
価 格 : 840円(税込)
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著者プロフィール
藤原 万璃子(ふじわら まりこ)
出身地 東京/星座 牡牛座/血液型 O型/趣味 旅行、観劇、音楽鑑賞、読書、ワイン/誕生日 5月11日
シャレード文庫、パレット文庫、アズ・ノベルズ等で作品を発表。
解説
好評シャルル&ハルキシリーズ!
ハルキの誕生日にとびきりのプレゼントを用意してサプライズを企てたタケシの前に次から次へとライバルが。出遅れたブラッキーとともに同盟を結び、護衛とは名ばかりの尾行を開始したのだが、思わぬ事件が勃発!? 表題作「バースデイ・パニック」ほか、天才ぞろいのアカデミーでも天才中の天才と噂されるわずか8歳の少年、フランシス・グリフォンの秘密と苦悩に《白虎》が動く「ブラックドッグ・ララバイ」の雑誌掲載分2本を収録。書き下ろしはシャルル視点の出会い編。
目次
■ ブラックドッグ・ララバイ
■ バースディ・パニック!
■ ビトゥイーン・ザ・パラダイス
あとがき
抄録
カチリ、と音がしてついに錠が開いた。
あれほど耳ざわりな音をたてていた蝶番はひそとも音をたてず、すべるように動いて扉を開いてゆく。
俺は――夢を見ているのだろうか。
ぽっかりとあいた空間に、にじむように人影が浮かび上がる。すらりとした長身、黄金率のバランスを持った完全無欠のプロポーション、月の光を集めて紡いだようなプラチナ色の髪、アメジストの冴えた紫色を映す双眸――夢にも見、うつつにも恋い焦がれてやむことのない、最愛の男の姿がそこにあった。
「……どこまで私に世話をかければ気がすむんだ」
夢の中の幻がしゃべった。適度に甘さを含んだ耳に心地よい中音も、記憶と寸分たがわぬものだ。
「無防備にもほどがある。私に関わっていることの意味を、もっと厳しく自戒してもらわなければ困るな」
端正な眉根を険しく寄せ、彼は苦虫を噛みつぶしたようにそう言った。それでも、そんな顔をしてさえ――そのあまりの美しさに、俺は恍惚とせずにはいられなかった。
「……顔色が悪いな」
怒ったようにそう言った次の瞬間にはもう、彼は俺の目の前にひざまずいて俺の顎をつかんでいた。息さえふれそうな距離にいきなりあの美しい顔が大映しになって、俺はびくんと身をふるわせる。
「……眠っていないのか。怪我は」
冷たい指先が顎の線をなぞる。我知らず、ぞくりと肌が粟(あわ)だった。とたんに鼓動が速くなる。
「……ひどいな」
きつく縛められ、ところどころ皮膚の破れた両手首に気づいて、彼は端正な眉根を曇らせた。結び目を二、三度ひっくり返して、次の瞬間にはもうマジックのごときあざやかさでするりと縄を解いてしまう。
「……痛むか」
矯めつ眇めつ傷の具合を看て、彼は気使わしげにそう言った。俺は答えることも忘れて、うつむき加減のその顔をじっと見つめていた。
「……ハルキ?」
いっかな答えない俺に不審を覚えたのか、彼はふと顔を上げ、夜のアレキサンドライト色に変わった瞳でじっと俺を見つめる。なめらかな額、稀代の名工になる彫刻よりも完璧なラインを描く鼻筋、上と下に酷薄と官能を同時に宿す形のいい唇、すっきりとそげた頬、細い顎。ああ、なんて……なんてきれいなんだろう。
次の瞬間、右の頬がパチンと小さな音をたてた。痛くはなかったけれど、びっくりする。ひどいよ、いきなりぶつなんて、何するんだよ。シャルル……!
「……ハルキ、私だ……わかるか?」
俺の目を覗きこむようにしながら、シャルルはゆっくりとそう言った。何言ってるんだよ、今さら。俺にわからないわけないじゃないか。
「シャルル……?」
俺は頷いて、息だけでそう囁いた。シャルルはゆっくりと嘆息する。
「そうだ、私だ……正気に戻ったな」
ぶった方の頬を指先だけで撫でさすりながら、シャルルは吐息ほどひそやかにそう言った。ぶわっと、熱いものが胸の奥にこみ上げる。
「……シャルル……ああ、シャルル……シャルル……!」
こらえきれず、俺はふるえる手を伸ばして彼にしがみついた。
シャルルだ。本当に、本当の……ほんものの、シャルル・アジャンだ。
ふれると消えてしまう幻じゃない。覚めればなくなる夢じゃない。見て、触って、噛んで、かいで、聞こえる――現実の、シャルル・アジャンだ。シャルル・アジャンなんだ。
ああ、ああ……シャルル……シャルル……!
「甥っ子は無事帰宅しているから安心しろ。おまえがなかなかつかまらないのでいらいらしているようだが」
なだめるように俺の髪を撫でながら、シャルルは淡々とそう言った。
甥っ子……甥っ子っていうと、タケシのことだよな。タケシがどうかしたんだっけ……?
「怪我らしい怪我はこれだけのようだな」
自分の首にまわった俺の手を引きはがし、シャルルは擦過傷の残る両手首を見つめながらそう言った。
うわ、自分で言うのもなんだけど、けっこう痛そうだな。ところどころすりむけて、血までにじんでいる。
「……あ!」
*この続きは製品版でお楽しみください。
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