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トップ>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説外国人>月と海賊
 
 ■ 月と海賊
 


月と海賊
著/ゆりの菜櫻 画/あさとえいり
発行/二見書房
レーベル/シャレード文庫
形 式 : 
価 格 : 840円(税込)
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著者プロフィール

 ゆりの 菜櫻(ゆりの なお)
 出身地:心はイギリス。星座:みずがめ座。血液型:O型。趣味:旅行。誕生日:2月2日。
 シャレード文庫、アズ・ノベルズなどで作品を発表。
解説

 フランス公爵令息のセシルは、政略結婚で恋人を奪われた悲しみを癒やすため、軍艦アフロディーテ号の処女航海に乗り込む。ところが艦が商船のふりをしたイギリス海賊に襲われ、セシルは乗組員共々捕虜となってしまう。敵の船長は、海賊とは思えない豪奢な衣装に身を包んだ銀髪の美男・アレックス。反抗するセシルを自らの「所有物」と宣言するが、女人禁制の船で所有物といえば、その意味するところは一つ――。略奪行為を生業にする粗暴な輩でありながら、アレックスはセシルが体験したこともない快楽を与えてきて……。そして不敵な言動の裏に秘められた彼の心の闇を知ったセシルは、身も心も彼の虜になってしまうが……。大航海時代を舞台にしたヒロイック・ラブストーリー!
目次

月と海賊
あとがき
抄録

「お前は英語がわかるか? だめならフランス語で話すが」
「英語で結構だ。海賊に情けなどかけられたくない」
 セシルも一応貴族の手習いで英語とスペイン語、オランダ語を習得させられていた。日常会話ならなんとか話せる。
 海賊のような輩から情けをかけられたら、バークレー公爵家の名折れというものだ。
 セシルは一層きつく男を睨みつけた。だが男は「それは面倒が省ける」と口にしたかと思うと、目にも止まらぬ速さでセシルを組み敷いてきた。思わずセシルの口から小さな悲鳴が零れる。
「貴様! 僕は男だぞっ! 何を考えてるんだっ!」
「何って…言って欲しいのか? お前みたいなネンネには想像もできないことだがな」
 相変わらず飄然とした態度を変えないこの男の頭をかち割ってやりたい。
「女に不足してるわけじゃないんだろっ!」
「大いに不足しているね。船に女を乗せるのは不吉とされているからな。女はこの船には一切乗せないことにしている。だから女不足なのは私ばかりじゃないと覚えておけ」
 それは暗に他の男にも気をつけろと言っているのだ。セシルの背筋に冷たいものが走る。
「だから、お前もここにいるのが一番安全だ。私のものだと宣言したからには、他の男は手を出してこないからな」
 男の手がセシルの金の髪に触れる。それだけで軽い電流が体全身に流れ、甘い痺れが広がる。
 そのまま男は形のよい唇をセシルの髪に寄せ、キスを仕掛けてきた。瞬間、肌が粟立ち体の芯がぞくっとする。
 な…なに?
 ありもしないはずの感覚に惑わされそうになり、思わず目を瞑った。そうでもしなければ、この男の情欲的な視線に縛られそうになるのだ。
「あっ…」
 男の指がセシルの頬に触れる。先ほど甲板では堪えた声が、ここでは漏れてしまった。
「フランスの宮廷では男色も好まれると聞いているが、お前はまだ慣れていないようだな…上手く逃げていたのか?」
 セシルの顔に一気に熱が集まる。男はニヤリと嫌な笑みを零した。
「なるほど、やはり貴族の出身か」
 自分の所業から次々にバレてしまう身の上に、セシルは困惑するしかない。
「手が綺麗に手入れされているから、そうだとは思っていたがな。庶民には無縁の手だ。ますます身代金が期待できるな」
 金―――!
 セシルの瞳に希望の光が宿った。
「ものは相談だ! 僕に手を出さないと誓ってくれたら、一万ルーブル出す。もちろん身代金とは別に、だ!」
 そうだ金だ。海賊は金が目当てなのだ。父には悪いが息子のためだ。これくらいなんとかしてくれるだろう。
「僕の父はバークレー公爵だ! 金は絶対に払う!」
 目の前の海賊は何かを確かめるかのように目を細めた。その様子にセシルの胸がまたドキリと大きく波打つ。
 恐怖ゆえなのか、それとも何か別の感情ゆえなのか、セシルの心臓が激しく鼓動する。セシルは胸をきつく押さえ、鼓動が収まるのを待った。
「ほう…あのバークレー閣下のご子息か…」
 どこか意味ありげに男は呟いた。その様子から、もしかして父の名前を挙げたのは逆効果だったのかもしれないとセシルは気づいた。
 父は名のあるフランス海軍の軍人だ。海賊にとっては目の上のたんこぶに違いない。
 今さらながらに自分の失言に顔が青くなった。
 だが、そんなことをこの海賊男に悟られたくもなく、セシルはそのまま気丈にまっすぐ男の顔を見つめた。
 よく見ても本当に整った顔の男だった。銀の髪も見事だが、そこから覗くブルーの瞳は鋭いながらも、女性ならば卒倒しかねない色気を含んでいる。さらに薄く形のよい唇は一見冷たそうだが、睦言を囁けば途端、熱を帯びそうであった。
 男のセシルでさえ、この男のことを観賞に堪え得る男だと思うのだから、世間の女がどれほどこの男に秋波を送っているのかも想像がつく。
 陸に上がれば女に不自由しないんだろうな…。
 なんとはなしに複雑な想いが胸を駆け巡る。
「なんだ。そんなに見つめて。誘っているのか?」
 男の指先がセシルの顎を掴み、セシルは顔を上げさせられた。
「な…何が誘ってるんだっ! 僕の話を聞いてなかったのか?」
「ああ、聞いていた。金をくれるのか?」
 セシルが無言で頷く。
「悪いがこの洋上で、金なんてなんの価値もない。陸に上がってからお前の国王からたんまり貰えればそれで十分だ。今はお前の体の方が何倍も価値がある」
 男が力強くセシルをシーツに押しつける。同時に言い知れぬ恐怖がセシルを襲った。
「やっ…放せっ! 放せったら! この馬鹿野郎!」
「見かけによらず口が悪いな。私の名前は馬鹿野郎などではない。アレックスだ。キャプテン・アレックスと呼べ」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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