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エンジェル・キッス
エンジェル・キッス
著/
藤原万璃子
画/
鳳麗華
発行/
二見書房
レーベル/
シャレード文庫
シリーズ/
シャルル&ハルキシリーズ
形 式 :
価 格 : 840円(税込)
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著者プロフィール
藤原 万璃子(ふじわら まりこ)
出身地 東京/星座 牡牛座/血液型 O型/趣味 旅行、観劇、音楽鑑賞、読書、ワイン/誕生日 5月11日
シャレード文庫、パレット文庫、アズ・ノベルズ等で作品を発表。
解説
ハルキの学舎であるユニバーサル・アカデミーに突然、現れたシャルル――。情報部の辣腕特殊工作員がわざわざルポライターに変装、出張ってくるとは……欧州一の最高学府の内部で何かが起きている……!? 一方、ちょうどその頃、ハルキの甥、タケシが入学。大好きな叔父との邂逅にはしゃぐタケシに、なぜかシャルルは冷ややかな態度で…… シャルル&ハルキシリーズ続編、登場!!
目次
■ エンジェル・キッス
■ エンジェル・ティップ
■ サンライズ・キス、サンセット・キス
抄録
「ああ、うん……そりゃあね、とても大切だよ。家を出るまでの十七年間、俺を育んできてくれた人たちだから。でも、今の俺には……もっと大事なものがあるから……」
さすがにちょっと口ごもって、所在なげにデスクの上を片づけるふうを装いながら俺は言った。ええと、灰皿はどこだったっけな……自分が吸わないもんだから、すぐどっかに潜っちゃうんだよなあ。
ああ、あった。出しっぱなしで埃(ほこり)かぶってるけど、まあこの際よしとしよう。
さりげなくシャルルにそれをさし出しながら、俺はゆっくりと顔を上げる。そして細くさしこむ午後の金色の光の中で、夜のアレキサンドライト色に光る瞳に向かってまっすぐに語りかける。
「俺……おまえの方が大切だから。家族よりも」
一瞬、不意をつかれたようにも見えたけれど、結局シャルルは顔色ひとつ変えなかった。ただまぶしそうに目を細め、長いまつ毛の間からじっと俺を見つめるばかり。
「あの……甥っ子よりも?」
ちゃかそうとして、シャルルは失敗した――ように見えた。瞳の奥で、何かがゆらりと立ち上る。砂漠に浮かぶ蜃気楼(しんきろう)のように。
「……うん。誰よりも」
これが俺の本音。まごうかたのない俺の真実。誰よりも何よりもおまえを愛しているということ。もしかしたらこれこそが、たったひとつの俺の真実。
「……まったく。家族泣かせの奴だ」
呆(あき)れたように、けれどもしかしたらとても幸せそうにシャルルは言った。肩をすくめ、大仰にため息をついて見せながら。
うん、そうだね。でもいいんだ。誰を泣かせても、誰を傷つけても、おまえが泣くよりは(あんまり想像できないけれど)ずっといい。
俺、おまえがいちばん大切だ。おまえをいちばん愛してる。家族よりも友達よりも、この世の誰よりも。
「……あんなに慕われているくせに。地獄に落ちるぞ」
ファウストを誘惑するメフィストフェレスみたいに、シャルルは世にも麗しく微笑しながらそう言った。その手がゆっくりと上がり、俺の顎(あご)をつまんでそっと上向かせる。柔らかく歪むそれはそれは形のいい唇が徐々に俺に近づいてくる。
いいよ、落ちても。おまえと一緒ならどこへでも行く。どこにでもついていく。おまえ以上に大切なものなんて、この世に何もないから。
そっと、かすめるように唇がふれた。ふれるだけの、本当にささやかな口づけだった。それなのに、たったその一瞬だけで俺の全身は燃え上がった。脈拍が上がり、呼吸が速くなり、気がついたら自分からシャルルを引きよせて思いきり唇を重ねていた。
ああ――これ。シャルルの唇、シャルルの舌、シャルルのキス。他の誰でもない、シャルルだけが俺に与えることのできる至福の時。
この一瞬のためになら、何を引き換えにして惜しくないと思う。おまえを愛してる。おまえだけを愛している。この世の誰よりも、何よりも。
「ん……」
かすかに、喉が鳴った。もはや臆面(おくめん)もなく舌音を響かせながら、俺は思う存分シャルルの唇をむさぼった。
こうなってしまうともう止まらない。もともとこらえ性のある方じゃないし、俺は自分の感性にはすこぶる従順だ。シャルルといえど、いや、シャルルだからこそ、そうそう簡単に許すわけにはいかない。
「ん……んん……」
しかし、こういう状況下に陥るといつも思うんだけれど――こいつも、嫌いな方じゃないよな。いやむろん、俺がそうなのは言うまでもないことなんだけれど、キスもセックスも、決して嫌いじゃないらしい。嫌いな人間なんているわけないと言ってしまえばそれまでなんだけれど、俺とすること自体をけっこう気にいってるみたいだというのがちょっと――いやかなり――嬉しかったりする。
だって、俺こいつに惚れてるんだもん。惚れた男に気にいられて、悪い気のしようはずがないじゃないか。
でも、もうそろそろそんなことを考えまわしている余裕もなくなってきていた。体が熱くなって、頭の芯(しん)が痺(しび)れて、意識が朦朧(もうろう)としてくる。まるで、全身に毒がまわっていくみたいだ。この上なく舌に甘い、至上の毒。シャルル・アジャンという名の。
*この続きは製品版でお楽しみください。
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