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トップ>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説外国人>ワンダフル・タイム
 
 ■ ワンダフル・タイム
 


ワンダフル・タイム
著/藤原万璃子 画/鳳麗華
発行/二見書房
レーベル/シャレード文庫 シリーズ/シャルル&ハルキシリーズ
形 式 : 
価 格 : 840円(税込)
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著者プロフィール

 藤原 万璃子(ふじわら まりこ)
 出身地 東京/星座 牡牛座/血液型 O型/趣味 旅行、観劇、音楽鑑賞、読書、ワイン/誕生日 5月11日
 シャレード文庫、パレット文庫、アズ・ノベルズ等で作品を発表。
解説

 褐色のアポロ――エキゾチックな美貌としなやかに躍動する完璧な肉体。絶大な人気を誇るメイルレビュー・クラブのトップダンサー、アンディ……だが、実は彼は中東のとある王国皇太子の忘れ形見なのだ。凄腕諜報部員シャルルの使いっ走りであるところの俺、ハルキの今回の任務は、この類稀なイイ男、アンディを本人に気づかれぬよう警護し、かつまた故国への帰還を説得することで……。
目次

■ ワンダフル・タイム
■ ナット・ワンダフル・タイム
抄録

 と、みずからの視線の先、ちょうど自分の部屋の前あたりに誰かがいることに俺は気づいた。すらりとした長身、広い肩幅と長い手足。離れたところからでもその姿の美しさが容易に想像できるような、そんな若い男のシルエット。
「……お帰り」
 逆光になって顔は見えなかったけれど、少しかすれたような耳ざわりのよい中音がやんわりと俺の背筋を撫(な)で上げた。それだけで、体がふるえる。
「待っていた。疲れただろう。早く入れ」
 まるで自分の部屋ででもあるかのように、奴は堂々と顎をしゃくった。すっきりとそげた頬から顎にかけてのきれいな線が、弱光の中に浮かび上がる。
「……鍵持ってんだろ、おまえ。先に来てたんなら入って待ってろよ」
 つとめて素っ気なくそう言って、俺はなるべく視線を合わせないようにしながら彼の前をすり抜けた。懐からカードキーをとり出し、スリップにそれを差しこもうと手を伸ばしたのはいいが、その手がかすかにふるえていることに気づいてぎょっとする。奴が気づかぬわけはない。見なくても、その類稀なほど美しい貌(かお)が意地の悪い微笑に染められてゆくのがわかる。ああもう、ほんとに……どうして俺ってヤツは、こいつの前に出るといっつもこうなんだ!
「……言っただろう。待っていたんだ。おまえを」
 差しこんだキーを引き戻し、ロックアウトされた扉を開けようと力を入れたその瞬間、耳の後ろからほの暖かい吐息とともにそんな声が降ってきた。息を飲み、ふり返ろうとした瞬間、俺はあっという間に抱きすくめられ、そのまま扉の隙間を押し広げるようにして部屋の中へ引き入れられる。
 抗(あらが)う間もあらばこそ、次の瞬間にはもう俺は閉じた扉に縫いとめられるようにして奴に口づけされていた。ビロードのような感触を持った柔らかな舌が、歯並を割って口中に侵入してくる。俺の舌をからめとるために。俺を籠絡(ろうらく)するために。
 刹那(せつな)、俺の息は止まった。別に初めてじゃない。口づけも抱擁も。それなのにいつもいつも、そのたびに俺の呼吸は止まり、心はふるえる。たかがこいつにふれられただけで。気配を、匂(にお)いを、ぬくもりを、こうして間近に感じるだけで。
「……見たぞ、今日のステージ。大分慣れてきたようだな。硬さがとれて……」
 うす闇の広がる部屋の中、口づけの合間を縫って奴はそう囁いた。下唇に軽く歯をたて、うすく開いた隙を狙(ねら)って再び熱くぬれた舌を口中にすべりこませる。その甘くて柔らかいものが俺のそれを探りあてるのにはいくらもかからない。しっとりとうっとりと、俺はあっという間にからめとられ、なぎ倒される。とたんに膝(ひざ)ががくがくとふるえ出し、ついに俺は立っていることもかなわなくなって目の前にある分厚い肩に無我夢中でしがみついた。
「……色っぽくなった。ずいぶんと」
 耳もとで熱く囁いて、今度は耳朶(じだ)を口に含んでそっと甘噛みする。打てば響くように、俺の身体はびくりとふるえた。
 ああ、もう、もう……なんでこんなに気持ちいいんだろう。なんでこんなに、身体ばかりか心までとけそうになるんだろう。ただ彼がそばにいるだけで、ただ彼にこうされているだけで。
「ま、待て……待てってば、おい……」
 項を伝い、鎖骨に歯をたて、手際よくシャツのボタンをはずし始めた指先とともにどんどん下りてゆく唇をなんとか阻止しようと俺は必死に身もがいた。だってこのままじゃ、このまんまじゃ……もういくらもたたないうちになんにもわからなくなっちまう……!
「……待てったら!」
 するりとすべりこんだ手がじかに肌にふれる。ぞくり、と半身が粟(あわ)だった。くっそー、まったくもっていつものことだけど、なんだってこうも性懲りないんだか……俺が我を失っちまったら、困るのはおまえの方だろうがよっ!

*この続きは製品版でお楽しみください。

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